上井草グルップボエンデ あさぎ介護日記2010年10月

10月7日（木）
ドイツ語が話せる男性のIEさん。普段から挨拶はドイツ語でしてくださっていますが、実は謙遜しながらも英語も話せます。いつもスタッフのシャツに書いている英語のスペルを見ては「○○○って意味ですよ。」と教えてくださります。意味も考えずにデザインだけで着ていた洋服等はIEさんに指摘されて初めて気が付いたりしています。今日、スタッフが来ていたシャツには『DIRECT』と描かれていたため、とってもシャイなIEさんが「DIRECTにわたしにプロポーズして！…ってことでしょうかね。ハハハハハ。」と気の利いたジョークでその場を和ませていました。

10月８日（金）
今日は涼しく過ごしやすい気候で、HKさんと善福寺公園で昼食をとることにしました。公園に着くとベンチに座りお弁当をひろげ、腹ごしらえ。「たまには外で食べるのもいいね～。」と嬉しそうに話されていました。お昼ご飯を食べて力もついたところで、ダイエット中のHKさんは、お散歩がてら、善福寺の池の周りを一周することにしました。半周したところでベンチに座り、ひと休憩。「まだ大丈夫！」とやる気満々のご様子で、残り半周も頑張って歩ききりました。いつも以上に歩いた為か、少しお疲れのご様子でした。「今日のことを日記に書いておくからね。」ととても嬉しそうにおっしゃっていました。

10月12日（火）
今日のお昼ご飯は、珍しい『鮪の頬肉』でした。珍しいだけではなく、一切れが手のひらほどもある大きさだったので、お年寄りの皆さんも目を丸くして「これは、何？」とかわるがわるスタッフに聞きにいらっしゃいました。ステーキにして食べました。いつも、味には厳しく辛口評論家（？）のTさんも「美味しい！」と好評でした。Hさんは「これ、モツ？」と質問されましたが、鮪とわかると「まぐろ！？」とビックリしたあと、「美味しい！」と満面の笑顔になりました。

10月13日（水）
夕方、ふらっと玄関に向かわれたＳＭさん。どうやら散歩に出掛ける様子。そっと傍に行き「私も一緒に散歩してもいいですか？」と伺うと、「あら、あなた散歩に行きたいの？なら行ってあげるわよ！」と一言。　スタッフの散歩に付き合ってくれたＳＭさん。サービス精神旺盛にスタッフを引っ張るようにして歩き、「あっちがいいわよ。ほら、こんなにいっぱい！！」と切り通し公園の方へ向かわれました。スタッフに「緑がいっぱいあるよ。」と身振り、手ぶりで一生懸命説明してくれました。公園のベンチに座りジュースを飲みながら、ＳＭさんの好きな歌を歌いました。公園のお花を見て歩き「もうそろそろ帰りますか？」と伺うと「そうね。帰りましょう。」と言うと、スタッフの手をとり、ボエンデの方へ。まるで、ぐずる子供を公園で遊ばせたお母さんのようでした。

10月14日（木）
今日はニュースで、チリで起きた地盤滑落事故の救出の模様がテレビで生中継されていました。皆さん食い入るようにテレビを観ており、一人目の救出者が地上に出てくると「良かったわ！良かったわ！」と皆さんそろって言われています。次々に救出される人を見て「こんなに沢山の人が閉じこまれていたのね。」とびっくりされていました。「二ヶ月くらい閉じ込められていたのですよ。」と話すと「良く生きてられていたのね。」とOさん。真剣にテレビに集中していました。

10月16日（土）
天気も良く、「近くでお祭りがあるから出掛けましょう！」とお誘いすると、「あらいいじゃない！」とおっしゃり、午前中にSBさんと一緒に近所のあけぼの祭りに出掛けました。お菓子や雑貨､陶器などが沢山並べてあり、それを見て「あら沢山あるのね。」と嬉しそうでした。その後、「おみこしを始めます。」と館内放送があり、外に出てみると手作りのおみこしを数人で「わっしょい！わっしょい！」の掛け声で担いでいました。それに合わせてSBさんも「わっしょい！わっしょい！」と手を叩きながら声を出していました。また、小さなお子さんを見て「あら可愛いわねぇ。」と手を振りながら話かけていらっしゃいました。

10月21日（木）
今日は朝から雨が降り生憎の天気になってしまいました。昼食のメニューは、コロッケとなり他の食材も買わなければならないので、車を利用してちょっと離れたスーパーへお買い物する事に決まりました。 S.Yさん、I.Fさんに「一緒にお買い物行きませんか？」と声を掛け２人とも色好い返事で「良いですよ～。」と即座に返答してくださりました。スーパーへ着くと子供が大好きなS.Yさん、「あら～可愛いわね～。」と早速赤ちゃん連れの親子に挨拶され、手を振って赤ちゃんをあやしておられ、とても楽しそうにされています。一方I.Fさんは買い物カートを押してくださったり、商品の品定めをしてくださったりと買い物に集中されています。２人ともお出掛けが好きな方で、何気ない毎日の買い物に出かけることでも、新鮮な気持ちになるようでとても清々しい表情され、周りの様子や人との関わりを楽しんでおられる雰囲気でした。

10月23日（土）
夜勤の勤務が始まる前、ステーションにいるとSMさんが屋上の花の水やりをしてスタッフと一緒に戻って来ました。SMさんは不穏になるとスーッと一人で外に出てしまうことがあります。足取りも不安定で、ひとりで出かけることはとてもむずかしい状態です。相手が話しかけても、笑顔で返すことはありますが、なかなか会話にならない事のほうが多く、他のお年寄りに強い口調で言われたりしたときに、硬い表情になります。でも今日は、気分転換に屋上に上がり、花の水やりをして、にこにこしていました。SMさんに「人生の大先輩に、お聞きしたい事があります。困った事があった時、どうやって乗り越えたの？」と聞いたら、SMさんは暫く黙っていてぽつりと「しょうがないと思って・・・」と答えてくれました。その時、なにかを教えてくれた様な気がしました。SMさんは、ジュースを美味しそうに飲み干しました。